カフェロンタン

2012年9月17日（月）
　敬老の日の特別ご招待で、府中市美術館の「ポール・デルヴォー　夢をめぐる旅」展へ。夫は入館無料。一人分だけ支払おうとしたら、付添人も無料で入れますとのこと。得した。

　「爺さん婆さんにデルヴォ―はそぐわないよね」とひそひそ呟きながら見始めたのだが、ああ、そうだった。思い出した。デルヴォ―、マグリット、エルンストといった画家たちは、我らが青春時代のいわば人気スターで、美術展の帰りにその作品や作風をコーヒー一杯で延々と、今から思えば気恥ずかしい用語をちりばめながら論じ合ったものだった。

　爺さんと婆さんは今、展覧会に来るとあっという間に疲れて、館内一階の突端にあるカフェロンタンへ直行する。ホットドッグを半分に切ってもらって、つまみながらコーヒーをすすり、デルヴォ―は早々に切り上げ、ときおり大窓の外を通りすぎていく散歩やジョギングの連中の姿をぼんやりと目で追いながら、近所の誰それの噂話やしばらく会っていない孫の話などを延々としている。

（関口まり子）