墓場放浪記 | 府中まちコム
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作成日 2015.02.10

この記事の分類 場所・施設, 府中絵日記

墓場放浪記

多磨霊園2015年2月10日(火)
 用事で小金井方面に出かけた帰り、多磨霊園にさしかかったので、歩きついでに正門を目指して突っ切ることにした。平日のせいかひっそりしている。ときどき車が通り過ぎるが、歩く人はいない。

 知人と同姓同名の墓を見つけたり、今風のおしゃれな墓に感心したりしながら、あっちへ曲がり、こっちへ曲がり、そのうち「遠き山に日は落ちて」が聞こえてきた。かなり大回りしてしまったようだ。風が冷たくなってきた。

 急がなくちゃと焦っていると、荒れ果てた墓が目に入った。家で言うとお屋敷、子孫はいないのかなと思いながら通り過ぎたとき、急に突風が吹き、背後でガタガタと音がした。ゾクッとして振り返ったが誰もいない。強風で卒塔婆が煽られたのだろうと見回したが卒塔婆はなかった。

 やな感じ。

 空がだんだん暗くなっていく。案内板を眺めても、放射状に分かれる道のどこに自分がいるのかわからない。多分こっち、とにかく早足と歩き続けて、ようやく見慣れた屋根が見えたときは、心底ホッとした。

 それにしても驚いたのは、クルマの中で本を読んでいる人を5人も見たこと。墓場で読書。集中できるのかなあ、あんなところで。

(関口まり子)