はーもにぃ

2012年9月9日（日）
　府中駅前のフォーリス2階にあった喫茶店がいつのまにか靴屋に変わっていた。そんなに利用していたわけでもないくせに、身勝手にも、消えてしまうと寂しいものだ。

　いつまでも、あると思うな喫茶店。

　いつも行くドトールが満席だったので、きょうは京王線高架下、グリーンプラザ別館にある「はーもにぃ」へ。

　ここに来ると、母校の学園祭の模擬食堂を思い出す。旧制女学校時代から続く伝統とかで、女生徒総出で来校者をもてなした。味はともかく、初々しく一生懸命だから父母たちには毎年大人気だった。

　「はーもにぃ」の店員たちは軽度の障害を抱えている。ときには注文を忘れたり、間違えたり、水をこぼしたりもするが、純朴で一生懸命な様子は、見ていて悪い気はしない。怒る客もいるが、大半はリピーターなので「いいよ、いいよ」と鷹揚だ。

　小腹がすいていたので500円のケーキセットを頼んだ。私はコーヒーとアップルパイ、夫は紅茶とチーズケーキ。注文を聞きに来たお兄さんが何か言いかけるのだがどうしても声が出てこない。
「レモンでね」と夫が言うと、一瞬苦笑いした後、よどみなく注文を復唱して奥に消えた。

「言おうとしたことがよくわかったね」
「相手の気持ちに寄り添えば、ちゃんとわかるのさ」と夫は自慢した。
　お兄さんは、本当は声が出るまでもう少し待って欲しかったのではないかと、ちらと思ったが、今は夫を立てておくことにする。

　散歩で疲れた後だったので、アップルパイの甘酸っぱい味がじんと沁みた。

（関口まり子）