変わる市庁舎

2016年7月25日（月）
　方向音痴である。どこに行くにもすんなり目的地にたどり着けず、周辺を無駄に歩きまわる。しかし、おかげで思わぬ発見をすることもあるから、回り道も悪くはないのだ。

　市役所北庁舎で開かれる会合に時々行く。帰りはたいてい誰かと一緒だが、今日はたまたま出遅れて一人になった。人気のない廊下を急ぎ足で進むうち、いつも乗るエレベーターがないことに気がついた。知らぬ間に行き過ぎて別棟に入ってしまっていたらしい。

　戻ろうとして振り向くと後ろも前もまるで合わせ鏡のように同じ通路が延々と続いている。行きつ戻りつしているうち、職員らしき人とすれ違ったが、迷子になりましたと言うのも恥ずかしいので知らん顔をしていた。

　連絡通路にさしかかって、はじめて横の方を見たら、目の前しか見ていなかったときには気付かなかった工事現場が窓の下に一望できた。市庁舎の取り壊し工事はまだ先だが、そうか、整備作業はもう始まっているのだな。

　見知っている街道や神社はどの方角にあるのだろう。周辺の建物を見ても見当がつかない。この町に長年暮らしているのに、初めて見る景色、しかも変わる寸前の景色。こんな出会いがあるとは、うん、方向音痴も悪くはないか。

（関口まり子）