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作成日 2018.06.16

この記事の分類 府中絵日記, 美術・工芸

長谷川利行展 七色の東京

長谷川利行展2018年6月16日(日)
 府中市美術館で開催中の長谷川利行展に行った。パンフレットには「関東大震災から太平洋戦争の直前まで、昭和初期の東京を歩き回り、怒涛のように描きまくった画家」とある。140点に及ぶ作品はどれも見応えがあった。

 速描きの画家だというが、ガラスの裏側に絵筆を走らせて絵の具を逆に塗っていったという、風変わりな作品に興味を惹かれた。

 が、何よりも心を惹かれるのは、自身の怒りや喜びや苦悩をまるで叩きつけているかのようなタッチと色使いだ。地下鉄の開通や賑わうカフェなど、どの絵にも激情がほとばしる。それでいて突き抜けた明るさも感じさせるのが奇妙だ。近代化の進む昭和初期から戦争へと突き進んでいく時代の東京の空気が画家の心にも複雑にのしかかっているのだろうか。

 戦争の影が色濃くなっていく頃、この無頼の画家は当時板橋にあった収容先の東京市養育院で胃癌の治療を拒み、ひっそり死んだという。遺骨は彼の死を知った友人に引き取られた。もし引き取り手がいなかったら、養育院の墓地に埋葬され、その後、多磨霊園の東京市養育院合葬塚に合葬されることになったのだろうか。

(田中則夫)