時の流れゆくままに・3 | 府中まちコム
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作成日 2021.05.13

この記事の分類 府中絵日記, 随想

時の流れゆくままに・3

2021年5月13日(木)

府中に住み着いて50年余になると述べたが、そのうちの13年間を宮町3丁目で、続く33年間を幸町1丁目で暮らしてきた。そして残りの5年ほどの日々を多摩河畔に近い現在の住吉町で過ごしてきている。

5分も歩けば多摩川沿いの「風の道」に出られるので、早朝や夕刻にのんびりと一帯を散策することも少なくない。都会としては稀なほどに美しい日の出や日の入り、さらには月の出や月の入りが見られるし、先日、木星と土星が大接近した折などは、肉眼でもその様子をつぶさに観察することができた。多摩河畔ならではのことである。

たまには夜陰に紛れて水辺のすぐ近くまで降り立ち、適当な場所を探して腰をおろし、持参したハーモニカを吹くのも悪くない。自分で言うのもなんだが、幼い頃から慣れ親しんできたハーモニカの吹奏技術はプロ級である。ただ、私には、ハーモニカという楽器は他者に聴かせるというよりも自らに聴かせるための楽器であるように思われてならない。

歩み来し道を深く省みながら、さらには前途に続く未知の道程に思いを馳せながら人知れず奏でる時にこそ、その響きは最高のものとなる。その音色を漏れ聴く夜鴨らや、折々の道行き人が感じ入ってくれるなら、それは望外の喜びとでも言うべきなのだろう。

(本田成親)