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作成日 2016.10.11

この記事の分類 わたしの作品

他人の顔、わたしの顔

色々な顔のイラスト2016年10月11日(火)
 高校生になったばかりの頃、電車内で男子生徒に声をかけられた。他愛もないお喋りの後、降りる段になって彼は訝しげに私を見て言った。
「俺のこと、覚えてんの」
 坂本くん、だよな、中学で同級だった、と思ったが自信がないので曖昧に返事して別れた。

 相貌失認という、人の顔を覚えられない病気があると知ったのは数年前だ。濃霧が一気に晴れた気がした。失礼なやつ、無愛想な女と直接間接に怒られ、恨まれ、笑われ続けてきたが、ごめん、私のせいじゃないもんね。原因不明、治療困難、100人に1人か2人というビョーキのせいですから。

 府中まちコム舎が先月開いたWORD描画の勉強会。写真を下絵に利用し、丸や三角の図形を組み合わせて、チラシやポスターでお馴染みの人物イラストを描く練習をした。しわの有無や髪型で年齢や性別を描き分けるのだが、どれもこれも同じ顔に見える、というか、顔であることを示す記号にしか見えない。

 そこで「頂点編集」という七面倒な機能を使って線だけで顔を描いてみた。マウスとAltキーを使い、修行僧のように描きまくったのだが、治療訓練にはなりそうもなく、結局のところ、自分の顔もろくに覚えていないという驚愕の事実を発見するに至った。

(関口まり子)