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作成日 2024.03.01

この記事の分類 交通・通信, 府中絵日記

ちゅうバスで行こう

2024年3月1日(金)

京王線府中駅から各駅停車に乗って5分足らずで中河原駅に着く、予定だった。外せない用事があったが、改札口は封鎖されていた。調布駅の電力設備故障で運転見合わせ中だという。

茫然と立つ人、スマホを操る人、立ち去る人。迷った。このまま待つか、別の手段を使うか。中河原行きの「ちゅうバス」があるのを思い出し、乗り場に行くと長蛇の列。ベビーカーもいる。乗れないかもと思ったが、バスは扉を閉めかけた後も駆け込んできた数人を受け入れた。乳母車は奥に進めず、発車と同時に赤ん坊が泣き出した。

途中で降りる人はほとんどいないから、バス停で待つ人は乗れない。「気の毒に」と誰かが呟いている。運良く何人か降りても、立錐の余地もない前側からは乗車できないので、運転手がマイクで外に伝える。
「降車口から乗って下さい、後払いでけっこうです」

途中で降りる人が「運転手さん、前の扉を開けて下さい。料金を払うから」と叫んだ。一瞬、心なしか和やかな空気が流れた。ベビーカーも途中で降りた。赤ん坊はいつの間にか泣き止んでいた。

「お気遣いいただき、ありがとうございました」
若い母親の声が車内の後方まで響き渡った。

とんだ遠回り、ぎゅうぎゅう詰めのバス旅も、まんざら悪くない気がした。

(関口まり子)