現代の寓話『ゼロ・グラヴィティ』 | 府中まちコム
府中まちコム

この記事について

作成日 2013.12.30

この記事の分類 娯楽, 府中絵日記

現代の寓話『ゼロ・グラヴィティ』

ゼロ・グラヴィティ2013年12月30日(月)
 府中駅前TOHOシネマズに評判の3D映画を見に行った。確かに、宇宙の美しさは想像に違わず迫力満点。けれど、ストーリーの展開は正直言ってあまり新鮮味を感じなかった。

 宇宙には制御不能の宇宙のゴミ、つまり人口衛星の破片が猛スピードで飛び交っている。女主人公は船外作業中にこの破片を受けて仲間を失う。地上との交信も途絶え、壮絶な孤独に耐え、これでもかこれでもかと襲ってくる難題を次々クリアし、彼女はめでたく地球上のとある湖に生還する。

 長々と続くエンディングクレジットを見ながら、この、ありえない、取ってつけたようなハッピーエンドの意味を考えているうち、私はいつの間にか涙ぐんでいた。誰もが見た夢、宇宙旅行。その実現こそ人類が果たした究極の科学の勝利だ。青い地球、冴え渡る宇宙。しかしそこには人類を滅亡に追いやる制御不能の凶器が飛び交っている。しかもその正体は人間の作り出した宇宙船の残骸。

 絶対に安全とされた原発が天災であっけなくメルトダウンし、膨大な被害をもたらしたことを思わずにいられない。始末できない核のゴミを抱えながら、原発の再稼働や他国への輸出を推し進めようとしている現実。科学発展の絶望的な結末をこの映画は暗示している。

 私たちは果たして本当にふるさとの湖にたどり着けるのだろうか。

(田中則夫)