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作成日 2019.09.14

この記事の分類 映画評

走る、走る

映画評『サムライマラソン』

2019年9月14日(土)

 ここ数年「走る」ことを取り上げた映画が数本ありました。『メイズ・ランナー(1~3)』そして『超高速!参勤交代(1~2)』ともにヒットしました。そして今年上映された『サムライマラソン』。この映画も走るシーンがストーリーの中心になっていて、とにかく走る、走る。しかも脇差を手で押さえて走るのだから、役者の方も大変だろうなと。

 走る足元と言えば、デコボコ道や坂道、石階段と、遠足(現在のマラソンのようなもの)ですが、着物を着てゴールを目指すサムライ達が、妙にたのもしく見えました。

 この映画の主役、唐沢甚内役を務めた佐藤健さんは、「目立たず、秀でず、失敗せず」という父の教えを守りつつ隠密として生きる役柄について、台詞(せりふ)を、言葉を足していくのではなく、むしろ削いでいきましたと、台詞ではなく感情で演じましたと。

 そう言えば萩本欽一さんが語っていた言葉に、芝居というのは、本当は台詞よりも、動きの方を大切にするべきなんですよね。台詞の行間こそ、演者のちからを発揮できる。芝居の要素がたくさん隠れているはずなんです。一行の台詞の前後を、動きや表情、いわゆる仕草というもので何倍にも膨らませてゆく作業が、演者の仕事ではないでしょうか、と。

 「時代や役柄」テイストが変われば、引き出しも変えて見せてくれた役者魂に、とても魅力を感じました。

(佐藤基容志 )