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作成日 2016.11.17

この記事の分類 府中絵日記, 自然・動植物

消えた梅林

消えた梅林2016年11月17日(木)
 第一小学校の北側を桜通りに沿って府中街道方向へ帯状に伸びる寿中央公園は、昼間は幼稚園帰りの子供達で賑わうが、朝夕は通勤通学の人が行き交う「道」としての顔を持つ。

 贅沢な道である。桜はもちろん、紫陽花、蓮の花と季節の移ろいを間近に感じることができる。この季節は、園内から国分寺街道のケヤキの色づくさまが視界に飛び込んでくる。

 何より近隣住民が楽しみにしていたのが梅林だ。花の季節なら、夜の闇に思いがけず鼻をくすぐるほのかな香り。梅雨の頃なら、早起きして実を拾いに行き、仲間とばったり出くわす楽しさ。豊作の年は近くに住む知人から大量の実をお裾分けしてもらった。

 梅は100年も生きると思っていた。しかし、今日通ったら根こそぎ消えていた。切り株が真新しい。たぶん最近伐採したのだろう。いきなりの無残な変わりように衝撃を受けた。

 生き物には寿命があり、ものごとに終わりは必ずやってくると知ってはいるが、そして今年はほとんど花も咲かず、楽しみにしていた実もならなかったのだが、親孝行しそこなってしまったような気分に襲われて、ぽっかりと広がった空間の中にしばらく立ち尽くした。

(田中則夫)