関の原公園のあうちの花 | 府中まちコム
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作成日 2013.05.22

この記事の分類 府中絵日記, 自然・動植物

関の原公園のあうちの花

関の原公園のあうちの花2013年5月22日(水)
 妹(いも)が見し 楝(あうち)の花は散りぬべし
  わが泣く涙 いまだ干(ひ)なくに

山上憶良 『万葉集』巻五798

 生涯学習センターで集まりがあった帰り道。少し遠回りして関の原公園に「あうち」の花を見に行こうということになった。

 甲州街道の1本北側の道に意外と広い公園があることも、そこに「あうち」つまり栴檀の大木があることも、この辺を何度も訪れている筈なのに、まったく知らなかった。

 花はちょうど散り始めていて、憶良の歌を偲ぶのにちょうどよいタイミングである。妻をなくした大伴旅人の気持ちを思いやって詠んだだというが、はらはらと舞い落ちる様はいかにもはかなく、寂しげで、万葉の歌人のせつない思いが伝わってくるようだ。

 花の時期は桜より短く、散るのも早いというが、うまい具合に見ることができたものだと、一同感慨にふけっていると、近所に住んでいるらしい女性が知らぬ間に立っていて、この栴檀は、公園を造成する際に、ここにあった家の庭先に植えられていたのが伐採を免れて残ったのだと教えてくれた。感謝。

(田中則夫)