あんず狩り | 府中まちコム
府中まちコム

この記事について

作成日 2013.06.09

この記事の分類 府中絵日記, 自然・動植物

あんず狩り

あんず狩り2013年6月9日(日)
 友人たちと誘い合わせて「あんず通り」に杏をもぎに行った。杏は期間が短い上、傷みやすいので店頭にはあまり出ない。ただで手に入るなら、こんなうれしいことはない。

 杏の木は高く、先端の枝に実が鈴なりに成っている。捕虫網を実に引っ掛けてひょいとひねると、熟れた実がぽろりと網の中に転がり落ちる。

 枝を折りも切りもせず、叩き落として実を傷つけることもない、木に優しいやり方と私たちは思っている。それで公道の果実を採る後ろめたさが帳消しになるわけではないけれど。

 通りの中ほどに男性が自転車を止め、木に登って実を落とし始めた。私たちは少し離れた場所に陣取った。すると、あとから通りかかった別の男性が、前の人の落とした実を拾い始めた。今に口争いでも始まるのではないかと、私たちははらはらした。

 ややあって、大声で、
「すみません、上に登っておられるとは気づかなかったので」
と謝る声がした。すると木の上から声が聞こえた。
「いや、いいんですよ、拾ってくださってけっこうですよ」

 ホッとした。暖かな空気が私たちの居るあたりにも流れてきた。これが、もしかすると、共犯者の連帯感というものなのかもしれないと思った。

「これ、よかったらどうぞ」
 先に登ったおじさんも、後から来たおじさんも、帰り際に両手いっぱいの実をお裾分けしてくれた。

 自然の恵みと人の親切に感謝しつつ、私たちは確かめ合った。
「また来年も来ようね」

(関口まり子)