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作成日 2020.04.30

この記事の分類 場所・施設, 府中絵日記

姿見の池

西国分寺の姿見の池

2020年4月30日(木)

 不要不急の外出を控えよと言われても、家にこもっていると体力は衰えるし、気も滅入る。初夏の陽気に誘われて、久しぶりに外に出た。目的地は以前から行ってみたいと思っていた恋ヶ窪の「姿見の池」だ。

 西国分寺駅から徒歩数分、住宅街の細い裏道を通り抜けて進んでいく。時折、すぐそばを通る中央線の轟音も聞こえるが、武蔵野の匂いを感じる。鶯の声も聞こえる。気分は上々、古代のロマンに思いを馳せた。

 鎌倉街道の宿場町として賑わった恋ヶ窪には湧水を湛えた池があり、遊女たちが朝な夕な自分の姿を映して見ていたので「姿見の池」と呼ばれていた。伝承によると、源頼朝に仕えた武将、畠山重忠がこの宿で遊女、夙妻太夫(あさづまたゆう)と出会い、深い仲となった。二人の仲を妬む男が「重忠は死んだ」と嘘をついたため、太夫は悲しみのあまり、池に身投げしたという。

 池は一度埋め立てられたというが、だいぶ前に遊歩道が整備され、近隣住民の憩いの場となっている。新緑の木々に囲まれた池は思いのほか静かで、遠い昔の戦国武将と遊女の悲恋を思い起こさせる。つたない歌を詠む気になった。

     武蔵野の妹のおもかげ今日もまた
       ささ波立てる姿見の池

(田中則夫)