白石加代子の『百物語』朗読公演於「府中の森芸術劇場」 | 府中まちコム
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作成日 2020.12.26

この記事の分類 娯楽, 府中絵日記

白石加代子の『百物語』朗読公演
於「府中の森芸術劇場」

2020年12月26日(土)

1992年に開始し、好評を博した白石加代子の朗読シリーズ『百物語』のファイナル公演が府中でも開催されるというので、有名女優をナマで見てみたいというミーハーな動機から劇場に行ったら、コロナ感染者数が激増しているのに席はあらかた埋まっていて驚いた。人気の故か。「巣ごもり」の反動か。

今回の演目は夢枕獏、筒井康隆、半村良、和田誠の怪奇短編4篇。前評判通り、舞台狭しと駆け回るかと思うとうずくまり、わめいたり囁いたり、そのパワーに圧倒される。演じ終わった後に一瞬ふらついたが(これも演技なのか)、入れ込み具合も伝わってくる。

だが、変幻自在の声や絶妙な間合いをもってしても、怖い話を聞いたときに感じる、底なし沼に引きずり込まれるようなドキドキする感覚は正直あまり湧いてこなかった。

とりわけ熱狂的ファンの多い筒井康隆の「如菩薩団」は怖くもなくキモくもなく、凡庸な社会観や類型的な女性像が気になって素直に笑えない。周囲からどっと笑い声が聞こえるたびに、いや増す孤立感。自分の感性が加齢のせいで相当鈍麻しているのかと、そっちの方が怖くなった。

(関口まり子)