時の流れゆくままに・2 | 府中まちコム
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作成日 2021.04.13

この記事の分類 府中絵日記, 随想

時の流れゆくままに・2

2021年4月13日(火)

府中に住み着いてもう50年余になるが、この地に居を定めたのはまったくの偶然からだった。当時大学の助手を務めていた私は、ささやかな家庭塾を開いて生活費を補おうと思い、そのために必要な借家探しを試みていた。

そんな折のこと、分倍河原で南武線に乗り換えようとしたのだが、当時の南武線は「難物線」と蔭口を叩かれるほどに電車の本数が少なかった。次の電車まで待ち時間が30分もあったので、気分転換を兼ねて一旦改札口を出たのだが、その時偶々目に飛び込んできたのが直ぐそばの不動産屋の賃貸物件広告だったのだ。

奇縁としか言いようのないその展開のお蔭で、私は大国魂神社そばの宮町3丁目に住むようになった。お祭りの度ごとに打ち上げ花火の音が轟き、近くの競馬場からはファンファーレの音が高らかに響き渡ってくる土地柄であったが、農工大南側の幸町に転居するまでの13年間同所に住み続けることになった。

そこで目にした大国魂神社や競馬場の絡む様々な想定外の出来事はなお忘れ難い。神社の例祭や競馬の様相も現在のそれとは大きく異なり、人間の本性に深く密着し、生々しいけれども感慨深い要素を秘め留めていたからである。

(本田成親)