随想 | 府中まちコム
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随想

時の流れゆくままに・47

「天使の辞典」草稿より抜粋 (追随する)人間が自由意志を持つということは、想像以上に困難なことである。たとえ自由に生きる権利を手にしたとしても、それを駆使することは極めて難しい。その結果、多くの場合、人々は「自由からの逃…

時の流れゆくままに・46

 「天使の辞典」草稿より抜粋 (手紙)一昔前までは、細長い竹筒先に動物の毛のついた墨汁吸着用器具や、一万年にわたって使えるとかいう特殊液体吸排出性の筆記用小道具、鋭く尖った変形ハート型小金具の先端を時々液体入りの小瓶に浸…

時の流れゆくままに・45

「天使の辞典」草稿より抜粋 (総理大臣)別称「総離大尽」ともいう。そのわけは、「大尽」すなわち、お金持ちのお偉いさんではあるが、時が経つごとに総ての人々の心が離れてしまう「総離」現象が生じるからである。どうせなら、「葬利…

時の流れゆくままに・44

「天使の辞典」草稿より抜粋 (死)苦渋に満ちた人生の旅路において出遭う最悪の悲劇や最大の恐怖から逃れるために、個々の人間に許される唯一かつ決定的な解決手段。自分の死期を公に予言していた占星術師ジロラモ・カルダノは、当日、…

時の流れゆくままに・43

「天使の辞典」草稿より抜粋 (恋人)著名な評論家だった吉本隆明が生み出した概念に「対幻想」というものがある。異なる一対の存在が出逢うことによって互いの心中に紡ぎ出される一時的な美しい共同幻影のことで、恋人とはそんな幻覚を…

時の流れゆくままに・42

「天使の辞典」草稿より抜粋 (靴)ペアで人間の足先に張り付くお前らが登場し、この現代社会を席捲するようになったおかげで、古来この尊い大地から委ね続けられてきた特別な感触を、日常的に体感できる者はほとんどいなくなってしまっ…

時の流れゆくままに・41

「天使の辞典」草稿より抜粋 (怪獣)人間の姿を纏った怪獣は政界や経済界に我が物顔で跋扈(ばっこ)していることが多い。「選挙運動」などと称する一種の怪しげな自己演出用の舞台装置を利用して、にこやかな表情で「皆様のお心にどこ…