時の流れゆくままに・22 | 府中まちコム
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作成日 2022.12.13

この記事の分類 府中絵日記, 随想

時の流れゆくままに・22

去る11月8日の夜には全国各地で見事な皆既月食が観測された。私も多摩川の土手に上り東の空で刻々と変貌する一連の月食の様子を眺めていたが、なかなかに印象的なものではあった。さらにまた、物好きなこの身は翌朝も早起きして再び土手上に佇み、川面にその影を映しながら、ゆっくりと西空に沈みゆく神々しい満月の姿を静かに見送った。

東の空に輝き昇る満月は美しいが、西空に沈みゆく満月もまた、それに劣らず見る者の心を深く打つものだ。ただ両者が大きく違うのは、前者が刻々と輝きを増していくのに対し、後者のほうは刻々とその輝きを失っていくことである。この朝の満月は、東方から陽が昇る午前6時30分ぴったりに奥多摩連峰大岳山の稜線の彼方へと沈んでいったのだが、姿を隠す寸前の月面の色は、背景の明るみ白んだ空の輝き殆ど区別がつかないほどだった。好みの問題もあることゆえ、一概には薦められないが、そんな光景にも一見の価値はあるようだ。

風の道と呼ばれる多摩川の土手道を、四季折々の風景の変化を楽しみながら散策していると、たまに望外の発見があったりもする。昨日の夕刻も西空に沈む太陽を拝もうと、関戸橋袂から上流方向に向かって風の道を歩いていた。案にたがわず途中で荘厳な夕陽を目にすることができたのだが、宵闇の迫る中をさらに上流へと足を運び、常々通い慣れた「五本松」と呼ばれる地点に差しかかかった。そして、その時もまた意外な発見をしたのである。

上流に向かって左側土手下の河原には流れに沿うようにしてしなやかな枝葉を付けた樹木が多数自生しているのだが、何とその樹木の枝先に白鷺が次々に舞い降りてきたのである。その数は優に数十羽はあっただろう。どうやら白鷺らはその一帯の樹上を(ねぐら)にしているらしかった。あるものは樹木の天辺近くに首を伸ばしながらとまり、あるものはそれより低い枝に肩を並べるようにしてとまっていたが、全体としてのその有様は樹々の枝々に「白鷺の実」が成っているような風情であった。携帯でその様子を撮影しようとしたが、残念ながら暗すぎて巧く映すことはできなかったのであるが…。

それにしても、大都会としては豊かな自然に恵まれたこの一帯で暮らせることは幸甚だ。

(本田成親)