バービーランドにようこそ | 府中まちコム
府中まちコム

この記事について

作成日 2023.09.02

この記事の分類 府中絵日記, 映画評

バービーランドにようこそ

2023年9月2日(土)

おとなの女性を模した米国製着せ替え人形を生身の人間が演じる話題作『バービー』を見に「東宝シネマズ府中」へ。

ピンク色を主調としたミュージカル仕立てのおとぎ話のような出だしに一瞬失敗したかと思ったが、意外な展開に思わず引き込まれた。

女性が大統領や医師など何にでもなれる理想的な社会「バービーランド」で人生(?)を謳歌していたバービー。(人形のくせに)死について考えずにいられなくなってしまった彼女はその違和感の原因を探るべく旅に出て、自分達の住む世界とは真逆の、いびつな人間社会の現実を知る。

家族とは、ジェンダーとは、社会とは、等々、バービーにとって未知の問題が幾重にも重なって彼女の脳内を駆け巡る。そして、生きるとはどういうことなのかという問いにたどり着く。

近くの席にいた外国人客がときどき爆笑している。英語やアメリカの社会的背景に精通していれば、もっと楽しめたのかもしれないが、ダジャレや他作品へのオマージュらしきものが全部わからなくても、けっこう面白い。

おのれの底の浅さも対象化する、この映画の作り手達の懐の深さを思う。おやっと思わせる結末も含めて、誰かと酒でも酌み交わしながら語り合いたい気分になった。

(田中則夫)