時の流れゆくままに・35 | 府中まちコム
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作成日 2024.01.05

この記事の分類 府中絵日記, 随想

時の流れゆくままに・35

特段の意図もなく昨今の世相にあれこれと想いを廻らしているうちに、何故か突然、「汚染」という言葉が脳裏の奥から湧き上がってきた。この言葉は、一般的には、放射性物質や有毒化学物質などが、人間社会や自然界へと広く拡散することを意味しているのだが、昨今の社会的動向を眺めていると、それら以上に問題とするべき「汚染」がはびこっているように思われてきてならないからだった。

独裁的あるいは権威主義的な政治家、特異なオカルト宗教の指導者、さらには強欲極まりない資本家や実業家が発する心理的毒気が社会に広がり、知らず知らずのうちに一般大衆の心が深く蝕まれていくタイプの異常事態がそれである。人心に取り憑くこの種の病的汚染拡大にはほとんど自覚症状が伴わないばかりか、汚されることに一時的な快感や依存性さえを覚えさせられたりもする。それゆえ、その毒素の発生源である存在は、労せずして己の意のままに罹患者となった庶民の心を自在にコントロールすることができたりしてしまうのだ。その意味ではこのうえなく始末が悪い。

もちろん、世の中にはそんな汚染に侵されることなく、独立独歩で我が道を歩む者もありはするが、ともすると、彼らは多くの庶民からは変人奇人とも見做されてしまいがちである。さらに皮肉なことには、我が道を行く人物らの姿に共感を覚え、その理念や思想に傾倒する者が現われたりしても、それもまた心理的汚染のひとつだとされてしまうきらいがあるのだから、話は厄介極まりない。所詮、人間というものは大なり小なり汚染された運命を辿りゆくしかないのだと、この際冷静に自覚すべきだと思いたくもなってくる。

だがまあ、そうは言ってみても、ここぞとばかりに迷える庶民をとことん食い物にしてしまう一部の悪徳政治家や新興宗教家、資本家、実業家の類の行為を、そのまま見逃してしまうわけにもいかない。我々庶民同士が連携して立ち上がり、彼らが吐く毒気に抗い実質的な被害を最小限に抑えるよう努めることは必要だろう。巧妙なフェイク情報だらけの現世にあっては、それすらも容易な話ではないが、自立した人間としての誇りを貫こうとするならば、たとえ不完全ではあろうとも、心身両面においてそれなりの対応策をとることは不可欠だろう。

(本田成親)