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作成日 2024.01.13

この記事の分類 場所・施設, 府中絵日記

府中町2丁目の穴

2024年1月13日(土)

年末に体調を崩してずっと外出を控えていたが、落ち着いたので久しぶりに散歩に出た。1月も半ばを過ぎて、正月の空気はすっかり消えている。街も人もどことなく元気がないように感じる。元旦の能登半島地震がいたるところに影を落としているようだ。

夕方の雨が雪に変わるという天気予報がどうやら当たりそうで、早く帰らなければと思いつつ、人気のない通りを足の向くまま歩いていたら、穴がいくつか掘られた空き地に出くわした。遺跡発掘現場だろうか。この穴は幾百年か昔の人々が暮らした跡を示しているのか。

しばらく見ないでいると、あちこちに真新しいマンションが建っている。窓々に色とりどりのカーテンがかかっている。この場所にも、そんな住宅が建つのかもしれない。

長い年月の間に何度も破壊と再生が繰り返される。自分たちが暮らした痕跡はどんな形で、何百年か後の人々に –もし未来が訪れるとしたら– 偲ばれることになるのだろうか。

…と思いながらスマホで写真を撮って帰ろうとしたら、すれ違った女性が「あっ、落としましたよ」と背後から追いかけてきて、手袋を渡してくれた。

今年の正月は人の優しさがひときわ身にしみる。

(田中則夫)