うときて | 府中まちコム
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作成日 2024.02.28

この記事の分類 場所・施設, 府中絵日記

うときて

2024年2月28日(水)

府中駅からけやき通りを横切って国際通りに入ってすぐの角に「うときて」という奇妙な名前の居酒屋があった。のぼり旗の文字を逆さに読めば意味は「真面目」か「不適当」か、通るたびに引っかかっていたのだが、しばらく前に移転し、店内に調度品やら紙類が散らばっているのがガラス越しに見えていた。そのうち解体作業が始まり、そして更地になった。

その並びにあった建物も数軒いっしょに消えた。塀から木の枝が大きくせり出していた家も。いつだったか、たまたま玄関が開いていて、人の気配はないのに居間のテレビがつけっぱなしになっているのが(覗くつもりはなかったのだが)見えた。地面だけになって、けっこう奥行きのある屋敷だったのだと知れた。

魚屋さんの建物は枯れたツタの這う外壁だけがまだ残っているが、中はがらんどう。ここも近いうちに取り壊されるらしい。その向こうには14階建てマンションの建設が進んでいる。

刻々と変わる風景。このあたりで生活していた人々と入れ替わりに新しい人たちがやって来る。戻ってくる人もいるだろう。別れと出会いを繰り返し、そうして、まちは「てきとう」に変わっていくのだろう。

(関口まり子)