クレイアニメの怪作『かたつむりのメモワール』 | 府中まちコム
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作成日 2025.03.18

この記事の分類 府中絵日記, 映画・演劇・TV

クレイアニメの怪作『かたつむりのメモワール』

2025年3月18日(火)
アカデミー賞候補作品『かたつむりのメモワール』のアダム・エリオット監督が来日、トークショー付き上映会が「新宿シネマート」で開かれた。一般公開は6月末。

クレイアニメとは粘土人形の手足や顔の表情を少しずつ変えながら撮影し、全体をつなげて滑らかに動いているように見せるアニメーションの技法。動物が喋ったりする子供向け映画を想像していたら、なんと、老婆がヒーヒー言いながら死ぬ場面から始まり、貧困、いじめ、酒や薬物の依存症、肥満フェチ、カルト集団の同性愛者拷問など、やるせないエピソードが連綿と語られる。声高に問題提起するでもなく、シニカルに笑い飛ばすでもなく、淡々と、ときにユーモラスに。整理され過ぎているように感じたが、初老の女性が過去を振り返って語るメモワール(=自分史)としては、これでよいのか。

主人公は子どもの頃から周囲になじめず、読書を心の支えとしてカタツムリのように殻に閉じこもって生きてきた。だが、親しかった老婆の死をきっかけに、子供の頃の夢を思い出し、その実現に向かって歩き始める。

彼女の夢は映画を作る人になること。監督の「この主人公は私でもあります。私なのです」という言葉が心に響いた。

(関口まり子)