時の流れゆくままに・8 | 府中まちコム
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作成日 2021.10.13

この記事の分類 府中絵日記, 随想

時の流れゆくままに・8

2021年10月13日(水)

小学4年生の孫を連れて久々に奥多摩の日原鍾乳洞へと出向いた。その地を訪ねるのは何十年ぶりのことになるだろうか。コロナ禍の世相の下であるにもかかわらず、車のすれ違いも容易でない日原渓谷奥の狭く険しい林道は、多数の来訪者の車で混雑しきっていた。

自然界の計らいの妙で常に気温が一定の鍾乳洞内は、夏場だと涼しいと言うより肌寒い。この鍾乳洞の入口は狭いのだが、内部は広くて奥深く、鍾乳石や石筍の織り成す多様な空間やそこで目にする天然の造形美の数々は感動的である。渡るのはまだ先のことになるだろうと思っていた「三途の川」を生身のままで越える事態にもなった。老いた身の注意力散漫さのゆえに、狭い通路を潜り抜ける際にはゴツンと岩に頭をぶつける羽目にも遭った。

意外だったのは、まだ幼かった息子や娘を連れて訪ねた頃に較べると、洞内の奥行が一段と広がり、最奥の大空間などには神秘的なムードさえも漂っていたことだ。さらなる驚きは近年発見整備された新洞のルートだった。幻想的な光景に彩られているのはよかったが、急傾斜のジグザグ階段が頭上遥かまで続き、最上段の地点に至ると、そこからは登りとは別ルートの狭い階段が、目も眩むような急角度で地の底へと落ち込んでいたのである。 その難路に挑みはしたものの、途中で何度も息切れしては立ち止まり、喘ぎつつ孫の跡を追う有様だった。もっぱら体力の衰えを痛感させられるばかりで、そんなことなら「省入洞(入洞を省く)」するべきであった(苦笑)。

(本田成親)