時の流れゆくままに・18 | 府中まちコム
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作成日 2022.08.10

この記事の分類 府中絵日記, 随想

時の流れゆくままに・18

2022年8月10日(水)

ウクライナ情勢は日々混迷の度を深めている。ロシア側に元々の非があるのは否みようがないが、その構図を少々異なる観点から考察してみるのも一興ではあるだろう。

喩えは悪いかもしれないが、自然豊かで食糧自給率も極めて高いものの、先駆的文化生活面では遅れる農山漁村と、文化的にも経済的にも恵まれてはいるが、自然環境や食糧自給力では大きく劣る都市部との間に生じた、突然の対立構図みたいに感じられもするからだ。あくまで、それは、極端な視点に立ったうえでの皮肉な見解には過ぎないのだが……。

平常時にあっては、双方が相補的に機能し緊密に連携し合うことによって、全体的にはバランスのとれた社会が実現している。しかし、何かしらの理由で相互の依存関係に亀裂が入り、軋轢(あつれき)が生じたとしてみよう。都市側は農山漁村部への金融制裁を行って経済的な打撃を与え、先進的文化情報の発信や最新生活技術の供与を拒むことになる。そこには農山漁村の窮乏を狙う都市側の意図が込められているのだが、現実にはそう巧くはことが運ばない。

自然環境に恵まれ食糧自給力も高い農山漁村側は、お金などなくても自分たちは十分食っていけるし、大自然の営みに即して生きていけばよいだけのことだから、都市側によるそんな制裁など少しも怖くないと開き直る。そして、食料品を始めとする生活必需品の都市側への供給を中止してしまう。そうなると、今度は都市側が窮地に立たされることになる。

都市文化というものは華やかで便利このうえないのだが、虚構の礎の上に成り立っているのも事実である。その点、地に足のついた農山漁村の生活文化は泥臭くて不便だが窮地には強い。もちろん、そんな騒動に際して、双方の中間的立場をとりつつ様子見をする地域も出現することだろう。都市部をNATO側諸国に、農山漁村をロシア側諸国に、中間的立場をとる地域を中・東アジア、アフリカ、中南米諸国に重ね見るのも思考鍛錬としては面白い。

(本田成親)