諏訪敦『眼窩裏の火事』を観る | 府中まちコム
府中まちコム

この記事について

作成日 2023.02.18

この記事の分類 府中絵日記, 美術・工芸

諏訪敦『眼窩裏の火事』を観る

2023年2月18日(土)

コロナのせいで出控える癖がついていたが、陽気に誘われ、府中市美術館へ。久しぶりに絵でも見ようという気になったのは、美術館のパンフレットに載っていた諏訪敦という画家のシュールで幻想的な作品が記憶に残っていたからだ。

美術館は若い人達で賑わっていた。ほとんどの人が判で押したように、絵を見て次に説明文を読むという行為を繰り返している。私も説明書きを読んで、なるほどと納得した次第。

作者は父を通して満州、ハルピンで悲惨な死を遂げた祖父母の姿を幻視し、それを作品の主テーマとしている、らしい。諏訪の父は生前、祖母から溺愛された。祖母が亡くなった後も死霊となって我が子を守る姿を、丹念な取材をもとに、画家は描いている。

また、若き祖母が満州の荒野で艶めかしい姿態から死臭が漂う亡骸となるまでを、小野小町の九相図さながらに描いていく。それは大野一雄のおどろおどろしい死の舞踊へとつながっていく、たぶん。

かつて話題になったスーパーリアリズム絵画も、わかったようなわからないような気がしつつ見入ったものだが、当時と比べて「観念」が全体的に軽くなっているような気がした。

(田中則夫)