『NHKスペシャル取材班、「デジタルハンター」になる』(講談社現代新書)を読む | 府中まちコム
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作成日 2023.08.03

この記事の分類 府中絵日記,

『NHKスペシャル取材班、「デジタルハンター」になる』(講談社現代新書)を読む

2023年8月3日(木)

図書館の返却本コーナーでたまたま目にした「デジタルハンター」という文字。デジタル怪獣をやっつける狩人を想像した。

真っ赤な嘘と真実をないまぜにした「チャットGPT」の巧みな物言いにもやもやしていたところだったので、何かヒントが掴めるかもしれないと期待して開いてみたら、単なるハウツー本ではなかった。

コロナ禍と政情不安で海外取材ができないNHKの報道チームが、OSINTという手法を使って、ミャンマーの軍政権による市民弾圧の実態を究明する様子が克明に、かつドラマチックに語られる。OSINT (open source intelligence)とは、一般公開されているデータをもとに国家や組織の情報を収集分析する技術。

取材班は、市民がスマホで撮った数秒の断片も含む膨大な数の動画や写真をパズルのようにつないで行くという気の遠くなるような作業を重ね、ミャンマーで起きた事件の証拠を積み上げていく。

デジタルハンターは真相を究明する正義の味方として頼もしくもある。だが、OSINTは諜報活動の一種であり、サイバー攻撃の攻防にも使われるという。サイバー戦争の武器としてのそれは、限りなく、こわーい、もやもやが消えそうもない。

(関口まり子)