『福田村事件』 | 府中まちコム
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作成日 2023.10.17

この記事の分類 府中絵日記, 映画評

『福田村事件』

2023年10月17日(火)

調布のイオンシネマで上映中の『福田村事件』を見に行く。

関東大震災が起きた数日後、福田村(現在の野田市)で香川県からやってきた薬売りの行商人15人が自警団に朝鮮人と間違われて襲われ、こどもや妊婦を含む9人が殺された。

不安と恐怖が極度に高まると人は正しい判断ができなくなる。それまで穏やかに暮らしていた人々が、軍や警察の流した噂に煽られ、在郷軍人に促されるまま、集団で人を殺すに至る。映画はその経過を克明に描く。

100年前と今では、社会のありようは随分違う。しかし、情報伝達手段が高度に発達した今でも、むしろ今だからこそ、巧みにかつ大規模に操作されたデマに踊らされて、ごく普通の人々が大きな過ちを犯す可能性は十分にある。

今年は関東大震災が起きて100年目に当たるため、新聞やテレビなどでも数多く特集が組まれており、五月書房新社から本も出た。

隅田川に死体が折り重なっているのを見たと母から聞かされていたし、墨田区生まれの友人も、公園で土遊びをしているときによく人骨が出てきたと言っていたので、被害の凄まじさについては多少知っているつもりでいたが、怖いのは地震火事だけにとどまらないことをあらためて思い知らされた。

(田中則夫)