百閒は一読にしかず | 府中まちコム
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作成日 2024.11.24

この記事の分類 イベント・祭り, 府中絵日記

百閒は一読にしかず

2024年11月24日(日)

府中市民協働まつり会場の一角で開かれた「手ぶらで読書会」に去年に続き参加。15分程度で読める短編をその場で読んで感想をぶつけ合う準備不要の読書会、午前の回は内田百閒の『旅順入場式』。

作者が奉祝銀婚式のお祝いに開かれた活動写真会に出かけた時の話。アメリカの喜劇や写真などに続いて映されたのが日露戦争二百三高地攻略戦、要塞を攻略した乃木将軍とロシアのステッセル司令官の会見場面まで。

はじめは登場する人間の姿が首のない兵隊のかたまりにしか見えなかったのがその中の顔を上げたひとりを見たことでその兵士たちの中の世界と見ている自分が混同してくるような不思議な感覚に。

このあたりの描写は筒井康隆氏やつげ義春氏の世界と相通じる、というか影響を与えているように思う。出てくる地名や時代背景など自分は『坂の上の雲』や映画『二百三高地』(出演:仲代達也、丹波哲郎など)の場面が浮かび胸熱であったが、そのへんは人によってかなりの個人差があるだろう。

ちなみに百閒先生、猫好きとしても有名である。

(絵と文 小嶋伸一)