直木賞選考会と司馬遼太郎 | 府中まちコム
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作成日 2025.07.27

この記事の分類 府中絵日記, 映画・演劇・TV・ラジオ

直木賞選考会と司馬遼太郎

2025年7月27日(日)

第173回芥川・直木賞は受賞作なしとなった。それを受け、『ラジオ深夜便』は賞の事務方や司会を担当してきた元文藝春秋社長平尾隆弘さんのインタビュー。思い出に残る選考委員会の様子や今回の候補作品の印象などを興味深く聞いた。

司馬遼太郎が選考会場の料亭「新喜楽」で受賞作の説明をした時のこと。文化部の記者から質問があった。
「下馬評ではこっちの作品の方が本命みたいに言われていたのに、どこがいけなかったのですか」
よくある質問らしい。司馬さんは柔らかな関西弁で答えたという。
「あんたなぁ。本人が俺を候補にしてくれて言うたわけやないやろ。わざわざ候補になってもらってるんやからその人のどこがあかんかったってケチつけるなんて失礼やろ。だから僕はそういうことは言いたくないなあ。そういうことは勘弁してほしいなぁ」

のちに一緒に仕事することになったときにこの時の話をしたら司馬さんは全然覚えていなくて、君あそこにおったんかとおっしゃったとか。特別なことではなくふだんから言っていることなんですね、と平尾さん。うれしいエピソードだ。大好きな司馬さんの笑顔が思わず浮かんだ。

(絵と文 小嶋伸一)