時の流れゆくままに・4 | 府中まちコム
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作成日 2021.06.12

この記事の分類 医療・健康, 府中絵日記, 随想

時の流れゆくままに・4

2021年6月12日(土)

地球上において傲慢に振舞う人間どもを戒めるべく、大自然の摂理が折々遣わすウイルスという名の密使は、執拗に人体に取り憑き、その命を奪うことも厭わない。1個体としては短命であるが、凄まじい繁殖力と拡散力、さらには強大な殺傷力を保有しており、その特殊能力をもって自己の存在をアピールし、人間社会を大きな混乱と恐怖とに陥れる。

有機的物質と原初的生命体との中間的位置にあるこの超微細な存在は、細菌類を含む諸生命体の細胞内に寄生し、その宿主のタンパク質を分解再構成することによって自己複製を果たしている。ワクチン開発等の対応策を嘲笑うがごとく、絶え間なく進化と変貌を遂げるこのウイルスには、人類の浅知恵などを超越した大宇宙の変遷にも関わる特異で変幻自在なシステムが秘め込まれてもいるから、話は何とも厄介なのだ。

殆どの人々はウイルスと聞くと究極の悪玉だと早合点しがちなのだが、実は生命体の進化に寄与する善玉的存在としての機能も多々有するというから話は一筋縄ではいきそうにない。人類の属する哺乳類が誕生したのも遺伝子にウイルスが作用し変異が生じた結果だという検証もなされてきている。

人間原理優先のもたらす負の一面をもこの際冷静沈着に考察し、我々人類の歩むべき道を模索してみる必要もあるのだろう。

(本田成親)