三島由紀夫と猫 | 府中まちコム
府中まちコム

この記事について

作成日 2023.11.26

この記事の分類 わたしの作品, イベント・祭り, 府中絵日記, 美術・工芸

三島由紀夫と猫

2023年11月26日(日)

プラッツで開かれた府中協働祭りの一角。「手ぶらで読書会」というイベントに参加した。課題はヘミングウェイの Cat in the Rain。

あ、ヘミングウェイと猫の話は『作家と猫』という本に載ってたな。帰ってから開いてみたら、ヘミングウェイも確かにいる。猫好きの作家は他にも開高健、池波正太郎、藤田嗣治、三島由紀夫など多数。

中でも三島の姿には思わずニヤリとしてしまう。ポケットの中の煮干しをねだるように飼い主を見上げている猫と、とぼけたように煙草をくゆらせている作家の図。

そうだ、これを銅版画にしよう。元の写真をスケッチブックに描いてから反転させたのを、グランド(防蝕剤)を塗った銅板に写す。ニードルで削って腐食液に入れると、時間によって線が深く太くなる。これを何度も繰り返す。めんどくさい作業だが、秒単位で計っても天気や湿度などで思った通りにはいかないことが多い。それだけに狙いが決まった時は格別だし、思わぬ出来になっていることもあるのがおもしろい。そしてそれは刷ってみて初めてわかる。

書斎の文机の向こうとこちらで見つめ合う三島と猫、双方の間で交わされている会話が聞こえてきそうな空気感が伝わってくれれば、嬉しい限りである。

(銅版画と文・小嶋伸一)