府中市美術館「吉田初三郎の世界」展 | 府中まちコム
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作成日 2024.05.25

この記事の分類 場所・施設, 府中絵日記, 美術・工芸

府中市美術館「吉田初三郎の世界」展

2024年5月25日(土)

府中市美術館で「吉田初三郎の世界」と題する展覧会開催中。別の用で府中の森公園に行ったのだが、看板の絵地図に導かれて「ついで見」。

吉田初三郎は大正から昭和にかけて数多くの鳥瞰図を描いた。作品の多くは鉄道会社の宣伝や観光案内を目的としているから商業デザインと呼ぶべきなのかも知れないが、長大な絵巻物のようだ。

見えるはずのない北海道やアメリカまで、しかも見当違いの方角に、1枚の絵の中に入れられているのは情報としては不確実だが妙に説得力があり、想像力を掻き立てられる。

今の時代、どんな辺鄙な場所でも様々な情報をネットで瞬時に入手できるが、山の向こうにあって見えない筈の渓流まで手に取るようにわかる描き方は、鳥の目、電子の目でなく、人間ならではのものという気がする。

作品は時代が進むにつれ、軍の検閲を受けたり、沿線にある大工場などが軍事上の理由から削除されたりしていく。時代の流れが見えてくる。昭和24年制作のHIROSHIMAの地図には山も川も鉄道も建物もない。巨大な雲が地面から沸き立つように上空へと広がる。雲をなぜメルヘンチックなピンク色で描いたのか、作者に聞いてみたい気がした。

(関口まり子)