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作成日 2015.11.20

この記事の分類 場所・施設, 府中絵日記

今日もお寺の鐘が鳴る

151120hongannji2015年11月20日(金) 
 4年前、出産を機に10年続けた職場を退職した。以来、平日昼間の白糸台をあちこち散策している。最初のうれしい発見は「正午にお寺の鐘が鳴る」ことだった。

 お寺の名は「本願寺」。京王線武蔵野台駅からも見える距離にある。開山は1516年。門前に寄り添うように立っているのは、堂々として立派なサイカチとケヤキの巨木だ。樹木が茂るいかだ道に面したお寺へ向かうとき、不思議とタイムスリップしたような気分になる。

 お寺があることは知っていた。しかし正午の鐘の音に、働いていた頃は気づかなかった。もちろん土日も鳴っていたのだろう。けれどその音に耳を澄ますようなゆとりはなかった。

 正直な話、退職は不本意だった。社会から切り離されたような、不安な気持ちが強かった。しかしこの鐘の音を聞くと気持ちが落ち着き、新生活が楽しみに思えてくるのだった。実際、産んでからも多いにお世話になった。寝ない赤ちゃんを連れてお堂近くをよく散歩したし、よちよち歩きの頃は鐘突きを見学させていただいた。

 お寺の方の話では、「府中でも、いまだ人の手で鐘をついているのはうちぐらい」とのこと。色づく樹々に囲まれて、昔と同じ鐘の音で府中の正午を知らせてくれる。

(中村綾子)