銅版画の技法あれこれ | 府中まちコム
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作成日 2024.05.30

この記事の分類 府中絵日記, 美術・工芸

銅版画の技法あれこれ

2024年5月30日(木)

銅版画の展覧会「銅楽展」(5月21日~26日、府中市美術館市民ギャラリー)に作品を出展した。

一口に銅版画と言っても技法は色々ある。クラプトンの『ティアーズ・イン・ヘブン』とクイーンの『ウィー・アー・ザ・チャンピオン』はドライポイント。銅板を尖ったニードルでガリガリやる。至極単純な手法だけに線の勢いが生きる。銅版のめくれがバリのようになってインクの感じが楽しい。

絵の方は勢いで、問題は歌詞。原画を撮って反転させたのを見ながら版に彫り込んでいく。TやH、vなど直線は彫りやすいが小文字のeanなどは勢い余ってカーブが曲がり切れない。今回は彫りやすいアルミ板を使った。腐食させなくてもよく、銅板より価格も安いのである。近頃の銅の値上がりは半端ない。

『骨・中原中也』『楓ギターとスピッツ』『TAKE FIVE』ではエッチングとアクアチントを使った。

グランド(防蝕剤)で覆った銅板にニードルで書いて腐食剤(塩化第二鉄溶液)に浸け、腐食されて銅が溶けた線の部分にインクを詰めて紙に刷りとるのがエッチング。時間によって線の強弱を調整する。

エッチングの線に対して水彩画のような面を作れるのがアクアチント。銅板を時間差で腐蝕させて濃淡を表現する。温度や湿度で計算通りにいかないことの方が多いが、思いがけない効果が出ることもあり、そこがいい。

(小嶋伸一)