時の流れゆくままに・21 | 府中まちコム
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作成日 2022.11.12

この記事の分類 府中絵日記, 随想

時の流れゆくままに・21

このコラムでは政治的な問題にはあまり触れないように心掛けてきてきたのだが、昨今の政界の惨状を目にしていると、そうばかりもしてはおられない。保守主義者を標榜する政治家の多くは、自分の首を守ることにしか関心のない「保()主義者」と成り果て、その結果、この国の民主主義は民意など度外視した「民()主義」へと堕落してしまっているからだ。

安倍元首相殺害事件が契機となって、隣国生まれの新興宗教の日本社会への異常なまでの浸透ぶりが問題になっているが、あの事件がなかったら、今なおその驚くべき実態が浮かび上がることはなかっただろう。詐欺まがいの霊感商法や洗脳されきった信者による高額な献金、さらにはそれによって苦悩する二世信者などの実情の深刻さはむろんだが、より懸念されるべきは、巧妙このうえない政界への侵食ぶりではなかろうか。

問題の新興宗教傘下の組織と関係を持った政治家らは、その実態を全く知らなかったとか、自分自身はその宗教とは無縁で何の影響も受けていないとか弁明するが、実はそうだからこそ相手は恐るべき存在なのである。世の常として、多くの人心の支配を狙う勢力というものは、その正体を隠し時間をかけて各界の重要人物の内面深くにじわじわと食い入っていく。そして、相手が気づいた時には既に身動きの取れない状況に(おとしい)れてしまうのだ。

新興宗教組織の背後に国際的な政治勢力などが絡んでいたりしたら一層手が悪い。操り人形となった政治家らを裏で動かし、意のままに国や社会全体の誘導を図ろうとするからだ。それを回避するためには、我々国民の誰もが政治の重要性に目覚め、そのシステムや人選の適否を的確に判断する能力を高めることが不可欠だ。ただ、その実現は容易ではない。安易な風潮に流されない我々個々の自立した精神や自我観の確立が前提となるからである。

そのためにも、国としては改めて教育界全般の質的な発展向上に尽力すべきであろう。国際的な見地からすると、近年の日本の教育力の低下は著しい。軍備費の増大などよりも教育費や研究費の充足のほうが国防には遥かに重要であることを皆がもっと認識すべきだろう。

(本田成親)